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貿易実務に興味がある方の中には、貿易実務検定と通関士のどちらかを取得したいと考えている方がいるのではないでしょうか。どちらも貿易に関係する資格であり、キャリアアップの一助にしやすいですが、資格の位置付けや出題される内容は大きく異なります。
そこで、貿易実務検定と通関士の違いや資格を選ぶポイントについて紹介したいと思います。
貿易実務検定と通関士の資格の比較
貿易実務検定の概要
貿易実務検定は、日本貿易実務検定協会が実施している、貿易実務のエキスパートとしての能力・知識を客観的に測る検定試験です。
民間資格で、A〜C級までの3段階のレベルに分かれています。平成10年3月に第1回試験が実施され、比較的メジャーな試験です。
通関士の概要
通関士は国家資格で、通関に関する法律や通関実務に関する専門家として位置づけられています。通関士試験は昭和42年から実施されています。
通関士として働くまでには、通関士試験に合格した後、勤めている通関業者から登録を申請し、財務大臣による確認を受けることが必要です。
通関士には、通関書類の審査などの独占業務があります。さらに、通関業者には設置義務が課されており、こうしたものが人気の要因となっています。
最も大きな違いは、通関士が通関業務を専門としている一方で、貿易実務検定は、貿易実務に関連した広い内容を扱い、それらの能力や知識を測っている点にあるでしょう。よく「通関士は狭く深く、貿易実務検定は広く浅く」と表現されますが、資格試験にその特徴が反映されています。
貿易実務検定試験と通関士試験の比較
貿易実務検定試験の特徴
レベルが低い順にC級〜A級の3段階があり、A級以外は、年に複数回、試験が実施されています。
試験会場は、東京・横浜・埼玉・千葉・名古屋・大阪・神戸・福岡・沖縄があります。団体受験も可能で、団体受験であれば、全国各地で行われています。
各級の特徴としては、
C級が貿易実務と貿易実務英語の2科目で、合格基準点は80%、合格率がおよそ6割となっています。
B級は貿易実務と貿易実務英語、貿易マーケティングの3科目で、合格基準点は70%、合格率はおよそ5割です。
A級はB級と同様の3科目で、合格基準点は公表されておらず、合格率はおよそ3割になることが多いです。
通関士試験の特徴
通関士試験は、年に1回開催され、北海道、新潟県、東京都、宮城県、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県、熊本県、沖縄県の全国13か所で行われています。
試験科目は
①関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)
②通関業法
③通関書類の作成要領その他通関手続きの実務
の3科目で、③が最も難しいとされています。
合格基準は例年、全ての科目で60%以上の得点が必要となっています。合格率は年によって大きく変動はしますが、10%台となることが多く、低い年では10%を下回ることもあります。
どちらの資格を取得するべきか
貿易実務検定と通関士、どちらを取得すべきなのでしょうか。
結論から言うと、通関業者への就職や通関業務に従事したいと考えている方は、通関士を目指していいと思いますが、通関業務に関心がない方や物流会社、商社を含めた様々な会社で、貿易関係の業務を遂行したいと考えている方は、貿易実務検定を取得する方が良いでしょう。
通関士は、独占業務があり、難易度が比較的高いことから専門的な内容を扱うことができます。しかし、通関業務はいわばマニアックな分野であることも事実で、直接的に業務で使用しない限りは、取得するメリットが少ないと思います。
一方の貿易実務検定は、貿易事務だけでなく、マーケティングなども出題範囲にあり、幅広い知識を業務で活かす場面が出てきやすいと言えます。資格取得をアピールする、というよりも、実務を行う際に役立ちやすいことを学べるメリットがあると考えられます。
貿易実務検定と通関士のダブルライセンスは
では、貿易実務検定と通関士のダブルライセンスは目指した方が良いのでしょうか。これはもちろん人によりますが、通関士が必要でなければ、ダブルライセンスを目指さなくても問題ありません。
通関士は、通関業者や通関業務の担当として働く場合に取得が望ましい資格ですが、貿易実務検定はより幅広く対象を広げています。そのため、通関業者に勤めている、通関に関係した部署にいる、といった方で、貿易実務に関する知識を増やしたいような方に、ダブルライセンスがおすすめです。
取得の順番は、どちらが先でも構いませんが、貿易実務検定のC級かB級を取得後、通関士試験を受験するパターンがやや多いです。
貿易実務検定と通関士の違いのまとめ
今回は、貿易実務検定と通関士を比較しました。貿易実務検定は通関士試験よりも難易度が低いですが、貿易実務に活かせる内容を学べるよい試験です。通関士にも特徴的な要素や取得のメリットがあり、貿易の実行に必要な仕事はバラエティに富んでいることがわかります。
貿易実務も通関業務も国際的な取引に関われる仕事です。そうした仕事を理解するための一歩として、どういった仕事をしたいかを基準にしながら、資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか。