司法試験法務・法律資格・検定

司法試験とは、弁護士、裁判官、検察官という法律の専門家(法曹三者)を目指す人が必要な能力を有するかどうかを判定する国家試験です。

司法試験というと誰もが聞いたことのある試験ではないでしょうか?
難易度の高い試験であるということは知っているけど、いったいどれくらい難しい試験なのか、なぜそれほど難しいのか、合格率はどれくらいなのかなど、あまり詳しくは知らないという人も多いはず。

この記事では、司法試験の難易度や合格率について紹介していきます。

司法試験に合格するのは難しい?

司法試験は、年1回、例年5月に実施されます。
受験資格があるため、誰でも受験できるわけではありません。法科大学院(ロースクール)を修了するか、司法試験予備試験に合格しないと、司法試験を受験することができません。

試験は、短答式試験(マークシート式)と論文式試験(記述式)の筆記試験です。

短答式試験は、憲法、民法、刑法の3科目です。
論文式試験は、全部で次の8科目があります。
・公法系科目:憲法、行政法
・民事系科目:民法、商法、民事訴訟法
・刑事系科目:刑法、刑事訴訟法
・選択科目(倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の8科目の中から1科目を選択)

試験日程は、次の通りです。なお、2日目と3日目の間に1日休みがあります。
1日目 選択科目、公法系科目(憲法、行政法)
2日目 民事系科目(民法、商法、民訴法)
3日目 刑事系科目(刑法、刑訴法)
4日目 短答式試験(憲法、民法、刑法)

受験手数料として28,000円が必要です。

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出典:出版社HP

司法試験の難易度は?

合格基準

司法試験は、一定の合格基準点以上の点数を取れば合格になるという試験ではなく、相対評価で合否が決まります。

まず、短答式試験で合格点を取る必要があり、短答式で合格点を取った人だけ論文式試験の採点がされます。
そして、短答式と論文式の成績を総合して合否が決まります。
合格者数は、直近5年ほどは1,500人程度で推移しています。

短答式の合格点も毎年変動しますが、近年はおよそ6割程度で推移しています。

合格率

司法試験の合格率はだいたい20~30%程度です。
近年は受験者数が減少しているのに伴い、合格率も上昇傾向にあります。令和3年度では受験者数が3,500人を下回り、合格率が40%を超えました。

以下は直近10年分の合格者数、合格率のデータです。

受験者数 短答合格者数 合格者数 合格率
平成24年 8,387人 5,339人 2,102人 25.1%
平成25年 7,653人 5,259人 2,049人 26.8%
平成26年 8,015人 5,080人 1,810人 22.6%
平成27年 8,016人 5,308人 1,850人 23.1%
平成28年 6,899人 4,621人 1,583人 22.9%
平成29年 5,967人 3,937人 1,543人 25.9%
平成30年 5,238人 3,669人 1,525人 29.1%
令和元年 4,466人 3,287人 1,502人 33.6%
令和2年 3,703人 2,793人 1,450人 39.2%
令和3年 3,424人 2,672人 1,421人 41.5%

難易度

合格率だけを見ると、20~30%程度、近年では4割近い合格率となっています。この数字は決して高くはないものの、国家試験の中には合格率が1桁のものもあるため、司法試験の合格率は決して低すぎるというわけではありません。

しかし、試験の難易度は合格率だけで決まるわけではありません。試験の内容などさまざまな要因を総合すると、司法試験はとても難易度が高いといえます。

では、なぜ司法試験の難易度はそれほどまで高いのでしょうか。
ここからは、司法試験の難易度が高い要因について考えていきます。

なぜ司法試験の難易度は高い?

試験範囲が膨大

司法試験は、先ほど見たように、短答式試験と論文式試験があり、短答式は3科目(憲法、民法、刑法)、論文式は8科目(憲法、行政法、民法、商法、民訴法、刑法、刑訴法、選択科目)が出題されます。

この科目数の多さだけでも十分範囲が広いのがわかりますが、1科目ごとに出題範囲がかなり広く、全体で見ると勉強量はとても膨大です。

合格に必要な勉強時間は、各予備校の記事を見てみるとだいたい3,000〜8,000時間といわれています。
司法試験はどの科目も満遍なく点数を取る必要があるため、偏りなく全科目をきちんと対策しようとすると、これだけの勉強量が必要になってくるのも納得です。

受験資格を得るために時間と費用がかかる

司法試験の受験資格は、先ほど見たように、法科大学院を修了するか、予備試験に合格するかの2つのルートがあります。

●法科大学院ルート

法科大学院には、法学部で法律を学んだ人が入る既修者コースと、法学部以外の学部出身者など法律を学んだことのない人でも入ることのできる未修者コースの2つのコースがあります。

既修コースは2年、未修コースは3年間は最低勉強する必要があり(留年すればさらに期間が延びます)、法科大学院の入試のために最低1年間は勉強する必要があります。
そのため、法科大学院ルートだと、司法試験の受験資格を得るために最低3〜4年は勉強する必要があります。

そして、法科大学院は、国公立大学でも授業料と入学金を合わせて200万円近い費用がかかります。私立大学だとさらにかかります。

●予備試験ルート

予備試験に合格するためには、最低でも2年以上の勉強が必要ですが、予備試験の合格率は4%程度とかなり低いので、法学部などで法律を勉強したことがない人が短い期間で合格を目指すことはとても難しいです。
しかし、効率よく勉強でき、仮に2年で予備試験に合格できれば、その翌年には司法試験を受験することができるので、法科大学院ルートよりも短い期間で司法試験合格を目指せます。

また、予備試験に完全に独学で合格するのは難しく、予備校を利用することが必要になってきますが、そのためには100万円くらいは費用がかかります。
決して安い額ではありませんが、法科大学院に比べると費用を抑えることができるのも、予備試験ルートのメリットといえます。

このように、法科大学院、予備試験のどちらのルートであっても、最終的に司法試験に合格するためには膨大な勉強時間とそれなりの費用が必要になってきます。

ごまかしがきかない論文式試験

司法試験は論文式試験のほうが配点の比率が高くなっているため、論文式試験が重要になってきます。

マークシート式の試験の場合、消去法などのテクニックで正解を導くことができたりします。
しかし、司法試験の論文式試験は記述式のため、小手先のテクニックで正解して点数を取るといったごまかしがききません。

そして、この論文式試験は、単なる法律に関する条文や判例の知識が問われるわけではなく、与えられた事案に対して学んできた条文や判例などの知識を適用して、どのように結論を導くかという、論理的思考力が問われます。
法律の知識を持っている人が自分の頭の中だけで正しい結論を導けたとしても、それを答案に表現できなければ点数にはなりません。

法律知識を使って、論理的かつ明解な文章で解答しなければならないのが、司法試験の難しさの一つといえます。

試験日程がハード

司法試験は、試験実施日が計4日間、2日目と3日目の間の休みの日を入れると合計5日間にわたります。
1日目は試験時間だけで計7時間、2日目も試験だけで6時間もあります。
中日は1日休みですが、残り2日の刑事系や短答式試験の復習をする人も多いです。

このように、4日間は脳をフル稼働させ、長時間座って文字を書き続けるので、体力的にとてもハードです。
また、中日は休みであると言っても緊張は解けないため、5日間は緊張状態がずっと続き、精神的にも負担が大きいです。

したがって、司法試験は体力的にも精神的にもとてもハードな試験です。最後まで乗り切るだけの体力が必要になります。

司法試験の難易度・合格率のまとめ

以上、司法試験の難易度、合格率などについて紹介してきました。
試験範囲が膨大であること、合格するまでに多大な時間と費用がかかること、試験本番の日程がかなりハードであることなどから、司法試験の難易度が高い理由がお分かりいただけたかと思います。

これから司法試験を目指す人は、この記事を参考にして司法試験の難しさを理解した上で、きちんと対策をするのがよいでしょう。

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出典:出版社HP