臭気判定士は、工場や事務所といったにおいが問題となりやすい場に赴き、測定するのが仕事です。測定の方法は実際に嗅覚を使って行うものになるのですが、私たちも悪臭を感じとることは可能ですし、果たして臭気判定士の資格に意味があるのでしょうか。
ここではそうした臭気判定士の意味についてご紹介していきたいと思います。
臭気判定士はいらない?
臭気判定士は、日本の社会活動において、においによる事故、トラブルを防ぎ、また安全性を確保するのに重要な存在となっています。臭気判定士になるためには、以下で示したような専門知識を身につけなければならず、簡単ではありません。
嗅覚概論 | ・嗅覚の仕組みやにおいの役割等に関する事項 ・嗅覚の 順応や 閾値等 、嗅覚の基本的な特性に関する事項 ・嗅覚とにおい物質の関係に関する事項 ・嗅覚検査やパネルの選定と管理に関する事項 ・においの評価に関する事項 |
悪臭防止行政 | ・規制地域及び規制基準に関する事項 ・臭気判定士(臭気測定業務従事者)に関する事項 ・その他の悪臭防止法、施行令、施行規則、告示等の内容に関する基本的事項 ・悪臭原因物、悪臭苦情及び悪臭防止法の施行状況に関する事項 ・臭気発生源及び悪臭防止対策に関する事項 |
悪臭測定概論 | ・嗅覚測定法全般(測定法の種類、尺度間の関係、希釈等)に関する事項 ・特定悪臭物質の性質・測定等に係る基礎的な知識に関する事項 ・嗅覚測定の精度管理・安全管理に関する事項 ・排出ガスのガス速度、温度、水分等の測定方法(JIS Z 8808)、臭気の拡散に関する基礎的な事項 ・臭気排出強度、脱臭効率の計算など測定結果の解析に関する事項 |
分析統計概論 | ・統計の基本的な考え方に関する事項 ・度数分布、代表値、散布度、単回帰、相関等のデータの基本構造に関する事項 ・統計的推定、統計的仮説検定等に関する事項 ・2点試験法、3点試験法等、臭気測定データの統計的処理に関する事項 ・精度管理に用いる用語等に関する事項 |
秋季指数等の測定実務 | ・ 試料採取に用いる器材とその取り扱いに関する事項 ・試料採取方法に関する事項 ・判定試験に用いる器材とその取り扱いに関する事項 ・判定試験方法に関する事項 ・臭気指数の算出 – 計算問題(5問 ) |
決して必要ないとする資格ではなく、ましてや工場を稼働させるうえで欠かすことのできない資格です。においにまつわる資格のなかでは最もレベルが高く、機械による測定が確立されていない現在では、最も需要のある臭気関係の資格です。
実は国家資格
臭気判定士は、臭気に関係する分野の中で初めての国家資格とされています。においにまつわる法律である「悪臭防止法」に則った測定を行っています。測定結果によっては作業を中止させたり、また対策措置を講じることになるため、その責任は大きいものとなっています。
また、自治体からの委託を受けて測定を行う場合は臭気判定士の資格が必須であり、そのような点では国家資格としての信頼性も保証されているといえるでしょう。
実施年 | 受験申請者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) |
令和2年度 | 562 | 472 | 146 | 31 |
令和元年度 | 594 | 505 | 125 | 25 |
平成30年度 | 603 | 522 | 132 | 25 |
平成29年度 | 638 | 563 | 135 | 24 |
平成28年度 | 686 | 590 | 168 | 29 |
平成27年度 | 703 | 612 | 137 | 22 |
平成26年度 | 694 | 611 | 125 | 21 |
平成25年度 | 653 | 571 | 177 | 31 |
平成24年度 | 645 | 574 | 148 | 26 |
平成23年度 | 628 | 567 | 117 | 21 |
平成22年度 | 655 | 577 | 204 | 35 |
平成21年度 | 677 | 609 | 126 | 21 |
平成20年度 | 684 | 607 | 224 | 37 |
平成19年度 | 723 | 651 | 306 | 47 |
平成18年度 | 787 | 697 | 291 | 42 |
平成17年度 | 761 | 683 | 244 | 36 |
平成16年度 | 784 | 701 | 293 | 42 |
平成15年度 | 744 | 661 | 233 | 35 |
平成14年度 | 828 | 764 | 149 | 20 |
平成13年度 | 964 | 863 | 267 | 31 |
平成12年度 | 974 | 861 | 223 | 26 |
平成11年度 | 872 | 787 | 157 | 20 |
平成10年度 | 681 | 628 | 199 | 32 |
平成9年度 | 616 | 587 | 237 | 40 |
平成8年度 | 717 | 688 | 244 | 35 |
国家資格のなかでは、比較的簡単な部類とされていますが、合格率は30%程度となっており、油断は禁物です。
意味ないと思われる理由
臭気判定士の意味がない、と思われがちな理由として、私たちが普段、臭気判定士として働いている方を目にする機会が少ないということが挙げられます。臭気判定士の勤務地は、工場のような人があまり行き来しない場所であるため、存在が認知されにくいです。
また、資格としてはかなり細かい分野となっており、あまり知られていないということもあるかと思います。ですが、持っていて損はない資格であることに変わりありません。
臭気判定士の意味のまとめ
以上、臭気判定士の意味について紹介しました。
単純ににおいを嗅いで臭いかどうかを判断するだけではなく、消臭の効果性や悪臭の発生源の特定・管理など、専門的な知識を必要としています。臭気については基準となる数値を定めて規制することは難しく、そこで活躍するのが臭気判定士となります。今後も欠かせない役割を担うこととなり、取得する価値は十分あると考えられます。ぜひ、目指してみてはいかがでしょうか。