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日商簿記検定2級、1級
まずは、日商簿記の2級、1級出題範囲や目安となる勉強時間を確認していきます。
○受験資格
日商簿記ではすべての級で受験資格の制限がなく、誰でも受験することが可能です。
○試験時間と配点
2級:「商業簿記」60点、「工業簿記」40点の100点満点
試験時間90分
1級:「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」それぞれ25点ずつの100点満点
試験時間は、「商業簿記」「会計学」で90分、休憩15分、「工業簿記」「原価計算」で90分の計3時間
○出題範囲
それぞれの級で頻繁に出題される内容を確認していきます。
・2級
商業簿記:連結会計、本支店会計、銀行勘定調整表、固定資産、有価証券など
工業簿記:費目別計算、個別原価計算、部門別原価計算、標準原価計算、総合原価計算など
・1級
商業簿記・会計学:2級の出題範囲 +税効果会計、リース取引、退職給付会計、理論問題など
工業簿記・原価計算:2級の出題範囲 +設備投資意思決定、業務的意思決定、CSV分析など
○学習時間
2級:250〜350時間
1級:500〜1000時間
税理士試験との比較
続いて、日商簿記と税理士試験の比較をしていきます。
○受験資格
まず、税理士試験と日商簿記の大きな違いとなるのが受験資格の有無です。
日商簿記には受験資格の制限がなく誰でも受験可能ですが、税理士試験には受験資格が設けられています。
・大学、短大又は高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
・大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
・一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
・司法試験合格者
・公認会計士試験の短答式試験に合格した者
・日商簿記検定1級合格者
・全経簿記検定上級合格者
・法人又は事業行う個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
・銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
・税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
以上となっており、いずれか一つに該当する場合は受験資格を得ることができます。
しかし、令和4年度税理士法改定により、試験科目のうち「簿記論」「財務諸表論」については受験資格の制限が撤廃され、誰でも受験が可能になりました。
一般的に、税理士試験と日商簿記で内容が近いと言われているのは上記の二つ「簿記論」「財務諸表論」であるため、受験資格における差は無くなったということになります。
○出題範囲
次に出題範囲の比較をしていきます。
税理士試験の出題範囲は、以下です。
・簿記論
複式簿記の原理、その記帳・計算及び帳簿組織、商業簿記のほか工業簿記を含む。ただし、原価計算を除く。
・財務諸表論
会計原理、企業会計原則、企業会計の諸基準、会社法中計算等に関する規定、会社計算規則(ただし、特定の事業を行う会社についての特例を除く。)、財務諸表等の用語・様式及び作成方法に関する規則、連結財務諸表の用語・様式及び作成方法に関する規則
先ほどの日商簿記検定の出題範囲と比べると、簿記論、財務諸表論ともに重なる部分があることがわかります。
ただし、簿記は各級で明確に出題範囲が示されているのに比べて税理士試験の出題範囲は大まかなものしか公表されていません。
○問題のレベル
次に問題のレベルの比較をしていきます。
一般的には、簿記2級合格レベルで5割くらい、1級合格レベルでは9割くらいの範囲を補っていると言われています。
そのため、基本的には簿記1級よりも税理士試験の「簿記論」・「財務諸表論」の方が難しいと言えます。
また、出題形式にも差があります。
簿記検定は、全部の問題を解き切ることが求められますが、税理士試験は問題量が非常に多くなっており、その中から正解しなくてはならない問題を瞬時に判別していく力が求められます。
○合格率
最後に、合格率を比較していきます。
簿記1級:10%前後
簿記論・財務諸表論:20%前後
合格率のみを比較していくと簿記1級の方が難しいようにも思えますが、税理士試験には受験資格が必要であり、母集団のレベルが高いという点を考えると、一概に簿記1級の方が難しいとは言えません。
また、簿記検定が絶対評価であるのに比べて税理士試験の合否は相対評価で決められています。
このことからも試験の難易度としては、
簿記論・財務諸表論>簿記1級
であると考えられます。
簿記1級を取得してから税理士の勉強を始めるべき?
それでは最後に、税理士試験の勉強に取り掛かる前に簿記1級まで取得するべきなのか、考えていきます。
結論としては、
簿記1級まで取得する必要はない!
というのが私の意見になります。
このように考える理由は2点あります。
1点目は、簿記論・財務諸表論の受験資格が撤廃され簿記1級を取得することによるメリットが少なくなった点です。
以前は、大学1、2年生はそもそも簿記1級を取得しなければ、試験を受けることができない状況であり簿記1級を取得することが税理士試験の受験において大きなメリットとなっていました。
しかし、現在はほとんどの受験生が最初に受験することになる簿記論・財務諸表論が誰でも受験可能となったため、簿記1級を取得する必要はなくなったといえます。
2点目は、簿記1級の難易度が非常に高い点です。
先ほども解説したとおり、簿記1級の合格率は毎年10%となっています。
最終的に5科目合格するまでに3〜5年かかると言われている税理士試験の勉強をするうえでは、より試験に出題されやすい論点や出題形式を効率的に学習する必要があります。
そのため、難易度が高く出題形式が違う簿記1級を先に取得するよりは、最初から税理士試験の勉強を始めた方が早くに合格できる可能性が高くなるでしょう。
ただ、簿記2級は1級に比べて合格率が20%ほどと高く勉強時間も少なく済むため、簿記2級を取得してから税理士試験に挑戦すると言うのは、おすすめです!
税理士と日商簿記のまとめ
ここまで、税理士試験と日商簿記検定の比較をしてきました。
まとめると、税理士試験の勉強を始める前に
簿記1級は必要ないが、簿記2級は取得しておくのがおすすめ!
ということになります。
税理士を目指そうとされている方はぜひ参考にしてみてください!