司法試験予備試験とは、簡単にいうと「司法試験の受験資格を得るための試験」です。

司法試験は多くの方が知っている試験だと思います。法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)になるために受験する試験です。

この司法試験には現在、2つの受験資格が設けられています。
1つは法科大学院を修了すること、もう1つが司法試験予備試験に合格することです(どちらの資格も5年間有効です)。

予備試験は、法科大学院に通うことのできない人でも司法試験が受験できるように設けられました。
予備試験に合格することで、法科大学院修了者と同様に司法試験を受験することができます。

この予備試験ですが、毎年合格率が低く、難易度がとても高いと言われています。
では、実際どれくらい難しい試験なのでしょうか。予備試験の難易度について紹介していきます。

司法試験の予備試験について

●受験資格
予備試験に受験資格の制限はありません。そのため、誰でも受験することができます。
また、司法試験とは異なり、予備試験に受験回数の制限がありません。

平成26年以降は毎年受験者数が1万人を超えており、徐々に増加している傾向にあります。
予備試験の人気が高まっている要因として、受験資格に制限がないこと、受験回数に制限がないことなどが考えられるでしょう。

●試験形式
予備試験は、短答式試験(マークシート形式)、論文式試験(記述式)、口述試験(口頭試問形式)の3つで実施されます。

短答式試験は誰でも受験できますが、それ以降の論文式試験・口述試験は、短答式・論文式の各試験の合格者のみ受験できます。

●試験スケジュール
予備試験は毎年1回実施されます。短答式、論文式、口述の3つの試験はそれぞれ別の日程で実施されます。

例年、短答式試験が5月中旬、論文式試験が7月中旬頃、口述試験が10月下旬頃に実施されます。

●出題科目
予備試験で出題される科目は、次の通りです。

・短答式試験
憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、一般教養科目

・論文式試験
憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、法律実務基礎科目(民事、刑事)、一般教養科目(選択科目)(※)

・口述試験
法律実務基礎科目(民事、刑事)

このように科目数が非常に多いですが、各科目の試験範囲が非常に広いです。
法律の学習自体内容が難しいですが、各科目に関して、短答式試験のための広い知識、論文式試験のための深い知識が必要になるので、予備試験の難易度は高くなっています。

※令和3年までは論文式試験に一般教養科目がありましたが、廃止されることが決まりました。令和4年からは一般教養科目の代わりに選択科目が追加されます。
選択科目は、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の8科目から1科目を選択します。この8科目は司法試験の選択科目と共通です。
今後は、予備試験対策としても選択科目の勉強が必須になってきます。

予備試験の合格率

では、予備試験の合格率はどれくらいなのでしょうか。
短答式、論文式、口述試験のそれぞれについて表にまとめたので見てみましょう。

●短答式試験

受験者数 合格者数 合格率
平成23年 6,477人 1,339人 20.7%
平成24年 7,183人 1,711人 23.8%
平成25年 9,224人 2,017人 21.9%
平成26年 10,347人 2,018人 19.5%
平成27年 10,334人 2,294人 22.2%
平成28年 10,442人 2,426人 23.2%
平成29年 10,743人 2,299人 21.4%
平成30年 11,136人 2,661人 23.9%
令和元年 11,780人 2,696人 22.9%
令和2年 10,608人 2,529人 23.8%
令和3年 11,717人 2,723人 23.2%

●論文式試験

受験者数 合格者数 合格率
平成23年 1,301人 123人 9.5%
平成24年 1,643人 233人 14.2%
平成25年 1,932人 381人 19.7%
平成26年 1,913人 392人 20.5%
平成27年 2,209人 428人 19.4%
平成28年 2,327人 429人 18.4%
平成29年 2,200人 469人 21.3%
平成30年 2,551人 459人 18.0%
令和元年 2,580人 494人 19.1%
令和2年 2,439人 464人 19.0%
令和3年

●口述試験

受験者数 合格者数 合格率
平成23年 122人 116人 95.1%
平成24年 233人 219人 94.0%
平成25年 379人 351人 92.6%
平成26年 391人 356人 91.0%
平成27年 427人 394人 92.3%
平成28年 429人 405人 94.4%
平成29年 469人 444人 94.7%
平成30年 456人 433人 95.0%
令和元年 494人 476人 96.4%
令和2年 462人 442人 95.7%
令和3年

このように、短答式試験、論文式試験とも、合格率は20%程度となっており、口述試験は90%以上ととても高い合格率となっています。
口述試験の合格率が高いといっても、短答式試験の受験者数のうち1割未満の受験者しか口述試験に残っていません。口述試験に残ったレベルの人たちが高い確率で合格できているというだけで、口述試験が簡単というわけでは決してありません。

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出典:出版社HP

●最終合格率(※)

短答受験者総数 最終合格者数 合格率
平成23年 6,477人 116人 1.8%
平成24年 7,183人 219人 3.0%
平成25年 9,224人 351人 3.8%
平成26年 10,347人 356人 3.4%
平成27年 10,334人 394人 3.8%
平成28年 10,442人 405人 3.9%
平成29年 10,743人 444人 4.1%
平成30年 11,136人 433人 3.9%
令和元年 11,780人 476人 4.0%
令和2年 10,608人 442人 4.2%
令和3年 11,717人

※短答式試験受験者総数に対する口述試験合格者数の割合を示しています。

短答式試験の受験者総数に対する最終合格者数の割合は、4%前後となっています。
このように、予備試験はとても合格率が低く、難易度がとても高い試験であるといえます。

予備試験の難易度はとても高い

ここまで見てきたように、予備試験は合格率が非常に低く、数字だけで見れば合格するのがとても難しいです。

また、試験範囲の広さも難しい要因の一つです。
短答式試験では全体的に満遍ない知識が必要で、論文式試験では広い知識だけでなく深い理解も必要になります。口述試験では知識があるだけでなくきちんと説明ができるかどうかが重要になります。
このような水準に達するまでにはある程度の勉強時間が必要になり、数年は要するのが通常です。

ここまで見てくれば、予備試験の難易度がいかに高いかということがわかっていただけると思います。

司法試験と予備試験は試験科目や受験資格などが異なるため単純比較はできませんが、数字だけで見れば、合格率が30%程度である司法試験と比べ、予備試験の方が難易度が高いともいえます。
実際、予備試験と司法試験の両方に合格した人の中では、予備試験の方が難しかったという声も聞かれます。

もっとも、司法試験は、問題文の長さ、試験時間の長さ、書く答案の分量が予備試験よりも多いです。その分、必要になる能力は司法試験の方が総合的には高いといえるかもしれません。

予備試験ルートのメリット

これだけ難しい予備試験ですが、受験するメリットはあります。

時間と費用を抑えられる

まず、法科大学院ルート(法科大学院修了の受験資格で司法試験を受験するルートのこと)に比べて、時間も費用もかからない点がメリットと言えます。

法科大学院では、既修者コースで2年、未修者コースで3年は最低限勉強しなければならず、さらに入試に合格するために1年程度は勉強する必要があります。
予備試験の場合は効率よく勉強できれば、最短で2年程度で合格を目指すことも不可能ではありません。

また、法科大学院の場合、国立大学でも入学金、授業料を合わせると200万円近くかかります。
予備試験の場合、完全に独学で合格することは困難ですが、予備校を利用する場合であっても費用をうまく抑えれば、法科大学院に通うよりも費用をかなり安く抑えることができます。

法科大学院ルートと予備試験ルートの比較については、別の記事で詳しく紹介しているので、こちらの記事をご覧ください。

司法試験の合格率が高い

ここで一つ見ていただきたいデータがあります。
予備試験合格の受験資格で司法試験を受験した人の結果です。

受験者数 短答合格者数 最終合格者数 合格率
平成24年 85人 84人 58人 68.2%
平成25年 167人 167人 120人 71.9%
平成26年 244人 243人 163人 66.8%
平成27年 301人 294人 186人 61.8%
平成28年 382人 376人 235人 61.5%
平成29年 400人 393人 290人 72.5%
平成30年 433人 431人 336人 77.6%
令和元年 385人 381人 315人 81.8%
令和2年 423人 419人 378人 89.4%
令和3年 400人 400人 374人 93.5%

まず、予備試験合格者はかなり高い割合で司法試験短答式試験に合格しています。
これは、予備試験合格の段階で、司法試験の短答式試験の合格水準に達しているためと考えられます。

そして、最終合格率もとても高いのが特徴です。
直近3年間をみてみると、予備試験ルートの合格率は8割を超えており、法科大学院ルートの受験者に比べて高い合格率となっています。

予備試験に合格することは困難ですが、予備試験に合格できるだけの実力があれば司法試験の合格もより近づくと言えます。

予備試験に合格した後は?

合格者の多くは司法試験を受験することになります。
予備試験の最終合格発表は毎年11月にありますが、次の司法試験は翌年5月に実施されるので、司法試験まで約半年しか期間がありません。
司法試験と予備試験は論文式試験の出題傾向が少し異なります。必要な基礎的知識が同じであっても、過去問などを通じて司法試験に向けた対策をしなければなりません。
合格で気が緩むと思いますが、すぐに切り替えて油断することなく司法試験に向けた勉強をする必要があります。

司法試験に合格した後は、1年間の司法修習を経て、多くの人は裁判官、検察官、弁護士とそれぞれの道に進みます。

司法試験に合格した後の進路については、別の記事で詳しく紹介しているので、興味のある方はこちらの記事をご覧ください。

司法試験予備試験の難易度のまとめ

以上、司法試験予備試験の難易度について紹介してきました。
合格率が低く、試験範囲がとても広いことから、非常に難易度の高い試験であるということを理解していただけたかと思います。
それでも予備試験に合格した人は高い確率で司法試験に合格できており、司法試験合格後は法曹三者としてキャリアの道が開かれるので、予備試験に合格することのメリットは大きいと言えます。

難しい試験ではありますが、司法試験を目指している人は、ぜひ予備試験に挑戦してみてはいかがでしょうか?

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出典:出版社HP