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司法試験予備試験とは、簡単にいうと「司法試験の受験資格を得るための試験」です。
司法試験は多くの方が知っている試験だと思います。法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)を目指す人が受験する試験です。
この司法試験には現在、2つの受験資格が設けられています。1つは法科大学院を修了すること、もう1つが司法試験予備試験に合格することです。
平成18年に始まった現行の司法試験(新司法試験)は、当初は原則として法科大学院を修了しなければ受験することができませんでした。しかし、時間や経済面など様々な事情により法科大学院に通うことができない人もいるため、そのような人たちに司法試験受験の道を開くため、平成23年から予備試験が実施されるようになりました。
予備試験は、法科大学院修了者と同等の学識、応用能力、実務の基礎的素養があるかどうかを判定する試験であり(司法試験法5条1項参照)、予備試験に合格すると法科大学院修了者と同様に司法試験を受験することができます。
では、予備試験とはいったいどんな試験なのか、その内容について詳しくみていきます。
予備試験の概要
受験資格
予備試験に受験資格の制限はありません。そのため、誰でも受験することができます。
一方、司法試験に受験資格があることはさきほど説明しました。
試験形式
予備試験は、短答式試験(マークシート形式)、論文式試験(記述式)、口述試験(口頭試問形式)の3つで実施されます。
短答式試験は誰でも受験できますが、それ以降の論文式試験・口述試験は、短答式・論文式の各試験の合格者のみ受験できます。
試験スケジュール
予備試験は毎年1回実施されます。短答式、論文式、口述の3つの試験はそれぞれ別の日程で実施されます。
例年の試験スケジュールは次のようになっています。
例年 | 令和4年度 | |
願書受付 | 1月 | 1月17日〜28日 |
短答式試験 | 5月中旬 | 5月15日 |
論文式試験 | 7月中旬頃 | 7月9日、10日 |
口述試験 | 10月下旬頃 | 11月5日、6日 |
最終合格発表 | 11月中旬頃 | 11月17日 |
出題科目
予備試験で出題される科目は、次の通りです。
●短答式試験
憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、一般教養科目
●論文式試験
憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、法律実務基礎科目(民事、刑事)、一般教養科目(※)
●口述試験
法律実務基礎科目(民事、刑事)
※令和3年までは論文式試験に一般教養科目がありましたが、廃止されることが決まりました。令和4年からは一般教養科目の代わりに選択科目が追加されます。
選択科目は、倒産法、租税法、経済法、知的財産法、労働法、環境法、国際関係法(公法系)、国際関係法(私法系)の8科目から1科目を選択します。この8科目は司法試験の選択科目と共通です。
今後は、予備試験対策としても選択科目の勉強が必須になってきます。
合格率、難易度
短答式、論文式、口述試験のそれぞれの合格率を表にまとめました。
●短答式試験
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
平成23年 | 6,477人 | 1,339人 | 20.7% |
平成24年 | 7,183人 | 1,711人 | 23.8% |
平成25年 | 9,224人 | 2,017人 | 21.9% |
平成26年 | 10,347人 | 2,018人 | 19.5% |
平成27年 | 10,334人 | 2,294人 | 22.2% |
平成28年 | 10,442人 | 2,426人 | 23.2% |
平成29年 | 10,743人 | 2,299人 | 21.4% |
平成30年 | 11,136人 | 2,661人 | 23.9% |
令和元年 | 11,780人 | 2,696人 | 22.9% |
令和2年 | 10,608人 | 2,529人 | 23.8% |
令和3年 | 11,717人 | 2,723人 | 23.2% |
●論文式試験
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
平成23年 | 1,301人 | 123人 | 9.5% |
平成24年 | 1,643人 | 233人 | 14.2% |
平成25年 | 1,932人 | 381人 | 19.7% |
平成26年 | 1,913人 | 392人 | 20.5% |
平成27年 | 2,209人 | 428人 | 19.4% |
平成28年 | 2,327人 | 429人 | 18.4% |
平成29年 | 2,200人 | 469人 | 21.3% |
平成30年 | 2,551人 | 459人 | 18.0% |
令和元年 | 2,580人 | 494人 | 19.1% |
令和2年 | 2,439人 | 464人 | 19.0% |
令和3年 |
受験者数 合格者数 合格率
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
平成23年 | 122人 | 116人 | 95.1% |
平成24年 | 233人 | 219人 | 94.0% |
平成25年 | 379人 | 351人 | 92.6% |
平成26年 | 391人 | 356人 | 91.0% |
平成27年 | 427人 | 394人 | 92.3% |
平成28年 | 429人 | 405人 | 94.4% |
平成29年 | 469人 | 444人 | 94.7% |
平成30年 | 456人 | 433人 | 95.0% |
令和元年 | 494人 | 476人 | 96.4% |
令和2年 | 462人 | 442人 | 95.7% |
令和3年 |
●最終合格率(※)
短答受験者総数 | 最終合格者数 | 合格率 | |
平成23年 | 6,477人 | 116人 | 1.8% |
平成24年 | 7,183人 | 219人 | 3.0% |
平成25年 | 9,224人 | 351人 | 3.8% |
平成26年 | 10,347人 | 356人 | 3.4% |
平成27年 | 10,334人 | 394人 | 3.8% |
平成28年 | 10,442人 | 405人 | 3.9% |
平成29年 | 10,743人 | 444人 | 4.1% |
平成30年 | 11,136人 | 433人 | 3.9% |
令和元年 | 11,780人 | 476人 | 4.0% |
令和2年 | 10,608人 | 442人 | 4.2% |
令和3年 | 11,717人 |
※短答式試験受験者総数に対する口述試験の合格者数の割合を示しています。
このように、短答式試験、論文式試験とも、合格率は20%程度となっており、口述試験は90%以上ととても高い合格率となっています。
短答式試験の受験者総数に対する最終合格者数の割合は、4%前後となっています。
このように、予備試験はとても合格率が低く、難易度がとても高い試験であるといえます。
司法試験と予備試験は試験科目や受験資格などが異なるため単純比較はできませんが、数字だけで見れば、合格率が30%程度である司法試験と比べ、予備試験の方が難易度が高いともいえます。
実際、予備試験と司法試験の両方に合格した人の中では、予備試験の方が難しかったという声も聞かれます。
予備試験合格者の司法試験合格率はとても高い
ここでもう一つみていただきたいデータがあります。
予備試験合格の受験資格で司法試験を受験した人の結果です。
受験者数 | 短答合格者数 | 最終合格者数 | 合格率 | |
平成24年 | 85人 | 84人 | 58人 | 68.2% |
平成25年 | 167人 | 167人 | 120人 | 71.9% |
平成26年 | 244人 | 243人 | 163人 | 66.8% |
平成27年 | 301人 | 294人 | 186人 | 61.8% |
平成28年 | 382人 | 376人 | 235人 | 61.5% |
平成29年 | 400人 | 393人 | 290人 | 72.5% |
平成30年 | 433人 | 431人 | 336人 | 77.6% |
令和元年 | 385人 | 381人 | 315人 | 81.8% |
令和2年 | 423人 | 419人 | 378人 | 89.4% |
令和3年 | 400人 | 400人 | 374人 | 93.5% |
まず、予備試験合格者はかなり高い割合で司法試験短答式試験に合格しています。これは、予備試験合格の段階で、司法試験の短答式試験の合格水準に達しているためと考えられます。
そして、最終合格率もとても高いのが特徴です。直近3年間をみてみると、予備試験ルートの合格率は8割を超えており、法科大学院ルートの受験者に比べて高い合格率となっています。
予備試験に合格した後は?
予備試験に合格すると、司法試験の受験資格を得ることができるので、ほとんどの人は司法試験を受験することになります。
なお、司法試験の受験資格には有効期限があります。
受験資格を取得した後最初に実施される試験から5年間有効なので、1つの受験資格で司法試験を受験できる回数は5回までです。
もし5年を経過してしまうとその受験資格で司法試験を受験することはできなくなるため、再度挑戦したい場合は新たに別の受験資格を得る必要があります。
司法試験の受験資格については、別の記事で詳しく紹介しているので、興味のある方はこちらの記事をご覧ください。
そして、司法試験に合格した後は、多くの人が司法修習へと進みます。
裁判官、検察官、弁護士になりたい人は、必ず司法修習に参加しなければなりません。
1年間の司法修習を修了すれば、ほとんどの人は裁判官、検察官、弁護士それぞれの道に進みます。
弁護士になる人は、多くが法律事務所に就職しますが、進路はそれだけに限られません。
企業内弁護士や自治体内弁護士(インハウスローヤー)、法テラス、民間企業の法務部など、弁護士としての働き方はさまざまです。
司法試験に合格した後の進路については、別の記事で詳しく紹介しているので、興味のある方はこちらの記事をご覧ください。
司法試験予備試験に関するまとめ
ここまで、司法試験予備試験について紹介してきました。
予備試験は司法試験とは別の試験で、司法試験の受験資格を得るために受験する試験です。合格率はとても低いですが、予備試験に合格できれば高い確率で司法試験の合格も目指すことができ、受験資格の制限なく挑戦できる試験なので、近年注目度が高まっています。
最終合格を目指すことはとても難しく、勉強を始めてから合格するまでに数年を要するのが一般的ですが、最終的に司法試験に合格できれば進路の選択肢が広がるので、挑戦する意義は十分にあります。ぜひあなたも予備試験に挑戦してみませんか?