宅建とは、宅地建物取引士のことを一般的に意味します。この資格は、不動産取引の専門家として位置付けられています。ただし、宅地建物取引士試験との区別を明確にするため、宅建士と呼ばれることもあります。
宅建士は宅建業者の設置義務があることから、宅建業を営む会社で正社員として働くイメージが湧きやすい資格です。しかし、会社から独立して新たに宅建業の会社を立ち上げるケースもかなり多く存在しています。その他にも、宅建業者から不動産売買の営業の業務委託を引き受けるケースもあります。
そこで、宅建士のフリーランスとして働く方法について紹介したいと思います。
宅建士の正社員以外としての働き方
宅建士は正社員以外として働くこともできます。具体的には、
①宅建業者からの不動産営業の業務委託
②独立開業
が主要な働き方とされています。
それぞれの働き方について、ここで詳しく見ていきましょう。
業務委託のメリット・デメリット
業務委託とは、比較的規模の大きな宅地建物取引業者から業務を引き受けることです。委託される業務は、不動産取引の営業が多く、独占業務の代行などもあります。正社員と同様に営業の仕事をすることに変わりはありませんが、メリットとデメリットがあります。
メリット
・時間を比較的自由に使いながら仕事ができる
・フルコミッション契約の営業の場合は、完全歩合制で、多く取引を仲介できればその分報酬も増える
・独占業務の業務委託であれば、副業で働けるケースがある
デメリット
・正社員よりも会社からのサポートを受けにくい
・収入が不安定になりやすい
比較的自由な働き方で、結果を出したらそれだけ給料に反映される反面、安定性に欠け、情報や顧客の紹介、福利厚生面での会社からのサポートを受けにくくなりがちなデメリットもあります。営業としての能力がシビアに問われます。こうした不安定な状態で、一定の成果を出し続けることは多くの方にとって難しいため、万人に勧める働き方とは言えません。自分には向いているのではないか、と感じたら検討してみてもいいでしょう。
注意点として、業務委託はフリーランスや副業として引き受けられますが、業務を行わず、宅建士としての名義のみを提供する名義貸しは違法行為となります。名義貸しの業者に巻き込まれないようにするために、契約内容の確認はしっかりとしておきましょう。
宅建士の独立開業のメリットと抑えておきたいポイント
宅建士が独立した場合、一般的な業種と同様のメリットが受けられます。
メリット
・様々な場面で、自分の考えに基づいた判断がしやすくなる
宅建士にとって、独立開業も選択肢の一つですが、乗り越えなければならないハードルもあります。そこで、事前に抑えておきたいポイントを紹介していきたいと思います。
①初期費用の高さや軌道に乗るまでの辛抱が課題
各種手数料や保証金、事務所の賃料といった初期費用は、それなりの金額が必要です。起業するときの必要資金等の事例は、以下のWebページに掲載されています。
不動産業 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/etc/other11.html
宅地建物取引業 https://j-net21.smrj.go.jp/startup/guide/proservice/05038.html
事務所の賃料で毎月まとまった金額の費用が発生することに加え、良い物件の紹介や集客までにも時間を要するため、独立した当初は、忍耐強さが求められることが非常に多いです。馴染みの業者にしか物件を回さない業者や足下を見て利益を上乗せしようとする業者も存在するため、信頼関係の構築や短期的な損失を被る出来事に苦労する可能性があります。
②事前に顧客基盤をつくってから独立するのが定石
顧客の開拓や豊富な物件の取り扱いは、一から始めると時間がかかります。そのため、まずは知名度のある不動産会社に営業として勤務し、そこで得た顧客基盤や構築された人脈を引き継いで、独立開業するパターンが多くなっています。不動産営業が未経験の場合、これまでの人脈などを活用することや新規顧客の開拓に注力することが考えられます。
③宅建士の独立は地方では難しい
人口が少ない地方で、宅建士が独立開業を目指すことは厳しいです。なぜなら、地方は、不動産取引の数が少なく、不動産価格は大都市に比べると安いためです。仲介手数料は、取引される不動産の金額から算出されるため、圧倒的に都心が有利で、地方は収益が上がりにくくなっています。構造な要因で起きているため、この構図がすぐに変わる可能性は低いと考えられています。
④ダブルライセンスによって、宅建業以外の業務と組み合わせも可能
宅建士は、独占業務が限られていることもあり、ダブルライセンスによって、独立開業を目指すことも有力な選択肢になります。FPを取得して、ファイナンシャルプランナーとして家計のアドバイスを行うことも考えられます。その他には、司法書士や行政書士、税理士といった独占業務がある資格を取得して独立開業することもあり得ます。
⑤最終的な目標やどの地域の不動産を扱い、どのくらいの規模で経営していきたいかを確認する
宅建士が独立開業するのであれば、開業後の目標を決めておいた方が良いでしょう。目標によっては、積極的に営業をかけていくスタイルになったり、無理なく会社が続けられるように業務を行なっていくパターンになるかもしれません。自分自身が納得できる働き方や取引が実行できることが独立の大きなメリットです。こうしたことはしっかりと確認しましょう。
まとめ
宅建士が不動産会社の正社員以外で働くための方法について見てきました。宅建士に限らないことではありますが、自分がやりたいことであったり、働くことに何を求めているのかが重要な判断基準になっていると思います。
宅建士としてのフリーランスや独立といった働き方を目指すのであれば、その先に何があるかをしっかりと考えて、どの選択肢を選ぶか検討してみることがいいのではないかと思います。
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