不動産鑑定士の資格は、平成18年度から制度が変更されて未経験からでも取得できるようになりました。

しかし、実際に未経験から資格を取得しても仕事にありつくことはできるのでしょうか?

 

今回は、未経験からの資格取得から実際に報酬を得るまでに必要な経緯をまとめていきます。

 

大島 大容 (著)
出版社 : 中央経済社; 第3版 、出典:出版社HP

 

1. 不動産鑑定士の仕事

 

∟不動産価値の鑑定・評価

不動産の取引を行う上で、その不動産がどの程度の価値があるのかという基準が必要になります。不動産鑑定士とは、さまざまな手法を用いてそれを鑑定・評価することで日本にある不動産の価値を決めるのが仕事です。

調査を行うのは住居や商業地域だけでなく、山岳地帯や海外の土地なども対象になることがあります。

 

∟金融業界などへの就職も可能

不動産鑑定業を必要とするのは、不動産業界だけではありません。銀行などが担保として土地や家屋を所持するときにも、不動産の価値をしっかり把握する必要があります。

また個人からの依頼はまだまだハードルが高いので、地方自治体などの都市計画に基づいた調査の依頼など大型案件を取り扱う可能性もあります。

 

∟全体数が少ない&鑑定士の高齢化が問題

近年はドローンやAIを駆使した不動産鑑定の可能性も広がっています。

その一方で不動産鑑定士は全体数が少なく、またその中でも高齢者が一定以上の割合を占めていることが近年問題視されつつあります。

時代の流れに合わせて、これから不動産鑑定に対する評価が大きく変化していく可能性があります。

 

 

2. 不動産鑑定士の資格取得までの流れ

 

不動産鑑定士は文系国家資格の中でも最難関の一つとされるものです。

そのため、取得までには一定の勉強とお金が必要になります。

 

∟年間合格者が約100人のみの国家資格に合格

不動産鑑定士試験の合格率は、一部だけ見ると宅建士試験よりも高い数字が出ることがあります。

しかし実際には「短答式試験」「論文形式試験」と2段階の試験を合格する必要がある上に、登録のための実務講習とその修了考査への合格が必要と、かなりハードルが高いものになっています。

合格のためには「2000時間〜4000時間」が必要だと言われており、一定レベルの知識が身に付いていることが必要です。

 

大島 大容 (著)
出版社 : 中央経済社; 第3版 、出典:出版社HP

 

∟登録方法

試験に合格後、登録を受けることで不動産鑑定士と名乗ることができます。

登録のためには実務研修を受ける必要があり、1年コースか2年コースを選ぶことができます。

全体は「講義」「基本演習」「実地演習」の3つの課程に分かれており、実地演習では不動産鑑定業を営む会社や大学などの機関にお世話になりながら経験を積むことになります。

 

この実務研修を終えて修了考査に合格したら、晴れて不動産鑑定士の仲間入りを果たすことになります。

 

∟更新について

不動産鑑定士には登録の更新制度がありません。

その分、業務をこなしたり自己研鑽を怠らないことが必要です。

 

 

3. 仕事を得る方法について

 

不動産鑑定士の資格を得た後は、どのように仕事に繋げていくことになるのでしょうか?

 

∟就職先はどんなところ?

不動産鑑定士の資格を持っていると、不動産鑑定業務をメインとする会社に就職することができます。

会社によっては、受験段階や試験合格者も優遇して内定を出す会社もあるようです。

 

そのほかには金融機関や不動産鑑定部門を持っている会社などが候補に挙げられます。

 

 

∟独立&開業の可能性はあるのか?

不動産鑑定士の独立&開業は常に需要があります。

しかし信頼と実績が評価基準となることが多いので、会社に勤めながらしっかりと独立のプランを練ってからではないと顧客に見つけてもらえない可能性があります。

 

∟都心部or地方ではどちらが有利?

都心部は仕事一件あたりの報酬が大きく、取引も積極的に行われるために魅力的な案件が多く存在します。

その分人口密集による不動産鑑定士の数が大きすぎることによって、新規開拓の難しさがあるでしょう。

 

一方地方の場合は、地方であればあるほど公的評価の仕事が安定して入ることが多く安定性が見込めます。地方に根付いた地盤がある場合は有利ですが、Uターン・Iターンによる開業の場合は、いかに地元民に信用されるかがポイントになります。

 

 

4. 未経験から不動産鑑定士を目指す未来

 

ここまでの情報を踏まえて、業界未経験者が不動産鑑定士資格をとった後の未来についてまとめていきます。

 

∟そもそも試験合格&登録までのハードルが高い

不動産鑑定士は、そもそも仕事ができるようになるまでに多くの時間と費用が必要になります。

年収UPや独立開業などの希望は大きいですが、それまでの難関をいかにスムーズに通れるかが最も重要なポイントになります。

 

 

∟独立のためには2年間の実務経験が不可欠

不動産鑑定士が独立して不動産鑑定業を行おうとする場合、免許を受ける必要があります。

その免許の要件には「2年間の実務経験」というものがあるので、未経験から不動産鑑定士になった場合はこの要件をすぐに満たすことができません。

まずはどこかの事務所か会社に所属して、しっかりと経験を積む必要があります。

 

大島 大容 (著)
出版社 : 中央経済社; 第3版 、出典:出版社HP

 

不動産鑑定士は未経験から取得しても食べていけるのか?独立&開業の可能性についてのまとめ

 

いかがでしたでしょうか?

不動産鑑定士の資格は数ある資格の中でも群を抜いて年収が高く、常に注目されています。

しかし、そのハードルの高さゆえ全体数が伸び悩んでいることもまた時事雨です。

不動産鑑定士としての仕事は今後も一定の需要が見込まれますので、キャリアを積み上げていきたい方にはぜひお勧めしたいと思います。