においを測る方法には、機器を用いた分析による測定法と実際に人の嗅覚を使って測定を行う嗅覚測定法の2種類が存在しています。臭気判定士とは、後者の嗅覚測定法を実施するための資格です。全国で1万件を超える苦情・トラブルを解決することが仕事になります。別名、臭気測定業務従事者と呼ばれています。ここでは、臭気判定士の概要、試験についてご紹介したいと思います。
嗅覚測定法とは?
嗅覚測定法は、人間の嗅覚を用いて感じることができる範囲内において、どのくらいの悪臭であるかを算出する方法です。悪臭防止法では22種類が悪臭物質として定められていますが、これらを規制するだけでは全ての問題を解決することはできず、その後の改正によって嗅覚測定法が確立しました。悪臭は数値化することが難しいため、人間の嗅覚を利用して測定する嗅覚測定法が国際的にも主流となっています。
臭気判定士の試験ってどんな感じ?
臭気判定士の試験は、毎年1回実施されており、受験手数料は税抜き18,000円となっています。18歳以上であれば受験することができ、試験についてはマークシート方式となっているため、記述対策等は必要ありません。なお、試験では計算問題が出題されますが、計算機の持ち込みは禁止となっています。
また、試験科目ならびに過去の合格率は以下のようになっています。
嗅覚概論 | ・嗅覚の仕組みやにおいの役割等に関する事項 ・嗅覚の 順応や 閾値等 、嗅覚の基本的な特性に関する事項 ・嗅覚とにおい物質の関係に関する事項 ・嗅覚検査やパネルの選定と管理に関する事項 ・においの評価に関する事項 |
悪臭防止行政 | ・規制地域及び規制基準に関する事項 ・臭気判定士(臭気測定業務従事者)に関する事項 ・その他の悪臭防止法、施行令、施行規則、告示等の内容に関する基本的事項 ・悪臭原因物、悪臭苦情及び悪臭防止法の施行状況に関する事項 ・臭気発生源及び悪臭防止対策に関する事項 |
悪臭測定概論 | ・嗅覚測定法全般(測定法の種類、尺度間の関係、希釈等)に関する事項 ・特定悪臭物質の性質・測定等に係る基礎的な知識に関する事項 ・嗅覚測定の精度管理・安全管理に関する事項 ・排出ガスのガス速度、温度、水分等の測定方法(JIS Z 8808)、臭気の拡散に関する基礎的な事項 ・臭気排出強度、脱臭効率の計算など測定結果の解析に関する事項 |
分析統計概論 | ・統計の基本的な考え方に関する事項 ・度数分布、代表値、散布度、単回帰、相関等のデータの基本構造に関する事項 ・統計的推定、統計的仮説検定等に関する事項 ・2点試験法、3点試験法等、臭気測定データの統計的処理に関する事項 ・精度管理に用いる用語等に関する事項 |
秋季指数等の測定実務 | ・ 試料採取に用いる器材とその取り扱いに関する事項 ・試料採取方法に関する事項 ・判定試験に用いる器材とその取り扱いに関する事項 ・判定試験方法に関する事項 ・臭気指数の算出 – 計算問題(5問 ) |
実施年 | 受験申請者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率(%) |
令和2年度 | 562 | 472 | 146 | 31 |
令和元年度 | 594 | 505 | 125 | 25 |
平成30年度 | 603 | 522 | 132 | 25 |
平成29年度 | 638 | 563 | 135 | 24 |
平成28年度 | 686 | 590 | 168 | 29 |
平成27年度 | 703 | 612 | 137 | 22 |
平成26年度 | 694 | 611 | 125 | 21 |
平成25年度 | 653 | 571 | 177 | 31 |
平成24年度 | 645 | 574 | 148 | 26 |
平成23年度 | 628 | 567 | 117 | 21 |
平成22年度 | 655 | 577 | 204 | 35 |
平成21年度 | 677 | 609 | 126 | 21 |
平成20年度 | 684 | 607 | 224 | 37 |
平成19年度 | 723 | 651 | 306 | 47 |
平成18年度 | 787 | 697 | 291 | 42 |
平成17年度 | 761 | 683 | 244 | 36 |
平成16年度 | 784 | 701 | 293 | 42 |
平成15年度 | 744 | 661 | 233 | 35 |
平成14年度 | 828 | 764 | 149 | 20 |
平成13年度 | 964 | 863 | 267 | 31 |
平成12年度 | 974 | 861 | 223 | 26 |
平成11年度 | 872 | 787 | 157 | 20 |
平成10年度 | 681 | 628 | 199 | 32 |
平成9年度 | 616 | 587 | 237 | 40 |
平成8年度 | 717 | 688 | 244 | 35 |
試験科目については、かなり専門的な知識が必要です。さらに合格率については約2割から3割となっており、決して簡単な試験ではないことがわかります。
合否の判定基準は毎回変わる?
臭気判定士の試験においては、合否の判定基準は定められていません。各試験の終了後に開かれる臭気判定士試験委員会において決定されます。決定された基準は協会のホームページにて公開、また受験者の合否通知に合わせて送付されます。参考として、令和2年度に行われた試験については、
①総合得点率が70%以上であること
②各科目の科目別最低得点率が33%以上であること
ただし「臭気指数等の測定実務」については、問31~38の8題(多肢択一)は33%以上、問39~問44の6題(数値解答)は66%以上とする。
という判定基準になりました。②のように、細かい部分に注目した基準が設けられることもあり、まんべんなく理解することが重要です。
臭気判定士の概要、試験のまとめ
以上、臭気判定士について紹介しました。
試験科目が専門的であること、合格率がやや低めなことから、資格取得には入念な準備、対策が必要になっています。嗅覚を用いる資格とはいいながらも、実技ばかりではないということを押さえておかなければなりません。もし興味があれば、1度受験を検討してみてはいかがでしょうか。