ガスに関連する設備の工事、維持、運用事業を行う場合、事業所ごとに設置され、保安の監督を行うのがガス主任技術者です。
ガス主任技術者になるには、同名の資格試験に合格する必要があります。今回は、この試験の各区分について詳しく見ていきたいと思います。
、出典:出版社HP
ガス主任技術者とは
ガスを供給するには、ガス発生設備、ガスホルダー、ガス精製設備、排送機、圧送機、整圧器、導管、受電設備などのガス工作物が必要となります。これらのガス工作物の工事、維持、運用を行っている各事業所に設置され、安全管理を行っているのがガス主任技術者です。
ガス主任技術者になるには、一般社団法人 日本ガス機器検査協会が運営するガス主任技術者試験に合格する必要があります。この試験には甲種、乙種、丙種の3つの区分があり、対象となるガス工作物の最高使用圧力によって分類されています。
ガス主任技術者の種類は?
前の項目でご紹介した通り、ガス主任技術者の試験は甲種、乙種、丙種の3つに区分分けされています。ここでは、それぞれについて見ていきたいと思います。
ガス主任技術者 甲種は、取得により「ガス工作物の工事、維持及び運用」の範囲で保安監督が可能となります。これは、全てのガス工作物の工事、維持及び運用を行っている事業所にてガス主任技術者となることができます。合格率は年によって幅がありますが、10〜20%程度となっています。
乙種は、「最高使用圧力が中程度及び低圧のガス工作物の工事、維持及び運用」、「特定ガス工作物に係るガス工作物の工事、維持及び運用」の範囲で保安監督が可能となります。乙種の合格率も10〜20%程度です。
丙種の取得により保安監督が可能となる範囲は、「特定ガス工作物および当該特定ガス工作物に係るガス工作物の工事、維持及び運用」と定められています。合格率は20〜30%程度です。
ガス主任技術者はどの区分であっても合格率が20%前後となり、比較的難易度の高い資格であると言えます。これは、試験形式が選択問題と論述問題から構成されているという点が一つの原因として挙げられます。たとえマークシート問題で高得点であったとしても、論述問題で計20点以上を取らなければ不合格となってしまいます。偏りのないよう、全範囲満遍なく学習すると良いでしょう。
また、ガス主任技術者試験では毎年新しい問題が出題されるのも難易度が高くなるポイントとなっています。過去問と似た問題では、ケアレスミスによる失点のないよう注意してください。
甲種・乙種・丙種 | 配点 | |||
科目及び出題数 | マークシート | 法令 | 16問全問解答 | 1問5点 |
基礎 | 15問中10問選択し解答 | 1問5点 | ||
ガス技術 | 27問中20問選択し解答 | 1問5点 | ||
論述 | 法令 | 1問全問解答 | 35点満点 | |
ガス技術 | 3問中1問選択し解答 | 35点満点 | ||
解答方式 | マークシート | 五肢択一式 | ||
論述 | 記述式 | |||
試験時間 | マークシート | 2時間(10:00〜12:00) | ||
論述 | 1時間(13:00〜14:00) | |||
合格基準 | 次の各項のすべてを満たす者を合格者とする。
1.マークシート問題及び論述問題の合計得点(300点満点)が180点以上であること。 2.マークシート問題の法令科目(80点満点)の得点が25点以上であること。 3.マークシート問題の基礎科目(50点満点)の得点が15点以上であること。 4.マークシート問題のガス技術科目(100点満点)の得点が30点以上であること。 5.論述問題(70点満点)の得点が20点以上であること。 6.論述問題の法令科目(35点満点)及びガス技術科目(35点満点)において0点がないこと。 |
問題方式 | 科目 | 出題範囲 | |||
甲種 | 乙種 | 丙種 | |||
マークシート | 法令 | ガス事業法及び特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律(特監法)に関わる各種の法令についての知識(法令は保安に関するものに限る) | |||
基礎 | 気体の性質、気体の熱力学と化学反応、燃焼の物理と化学、流体力学と伝熱、ガス技術に使われる技術に関する知識 | 物質の構成、物性の基礎知識、気体の性状などに関する知識 | |||
ガス技術 | 製造 | ガス事業に使われる都市ガス製造の変遷、都市ガスの原料、ガスの製造設備、ガスの熱量調整と燃焼性管理、ガスの熱量・比重の測定及び特殊成分の分析、ガスの付臭、計装・電気設備、設備建設、設備保全、設備の操業、保安・防災、環境対策などに関する知識
※甲種は高・中・低圧、乙種は中・低圧が対象 |
ガス小売事業に使われるガス原料とガス発生方式、ガス発生設備の製造能力算定、特定製造所の設置場所、特定ガス発生設備の設置計画、自然気化による特定ガス発生設備、強制気化による特定ガス発生設備、調整装置、特定ガス工作物の操作・運転管理、災害その他非常の場合の措置、特定ガス工作物等の維持管理、圧縮天然ガスによる特定ガス発生設備などに関する知識 | ||
供給 | 供給計画と供給管理、整圧器とその管理、ガスメーターとその管理、導管の設計、防食設計と防食管理、導管の工事、溶接と非破壊試験、維持管理、地震対策などに関する知識
※甲種は高・中・低圧、乙種は中・低圧が対象 |
ガス小売事業に係るガスの供給方式、供給の計画、整圧器、ガスメーター、ガス栓、導管の設計・施工、腐食防止対策、導管等の維持管理、地震対策などに関する知識 | |||
消費 | ガスの燃焼についての基礎、ガス燃焼機器の種類と構造機能、安全装置と安全管理などに関する知識 | ||||
論述 | 法令 | ガス事業の実施に必要な法令上の基本的知識 | |||
ガス技術 | 製造、供給、消費それぞれに必要な基本的知識 |
出典:https://www.jia-page.or.jp/exam/examination/outline/
ガス主任技術者の種類のまとめ
今回は、ガス主任技術者の種類についてまとめてきました。
ガス主任技術者試験は、甲種、乙種、丙種の3つに分かれていますが、どの区分も比較的難易度が高くなっています。一方で、主任者となることで昇給につながるなどメリットのある資格ですので、是非取得してみてはいかがでしょうか。
、出典:出版社HP