環境問題についての関心が年々高くなっていることを受けて、
「樹木医」という職業への関心も高まっている傾向にあります。
これを読んでいる方の中にも、
「樹木医について興味がある。」
「樹木医の資格を取得してみたい。」と思っている方もいるでしょう。
今回は、樹木に関連する業務に従事したことがない方、つまり、未経験者が
樹木医の資格を取得するには、どのような方法があるのかに注目して、見ていきましょう。
樹木医とは
「樹木専門の医者」とイメージすると、わかりやすいと思います。
病気を罹患してしまった樹木に診断・治療を行うために、
周囲の環境を調査し、その原因を探ります。
また、治療後、樹木が病気を罹患しないような再発防止しながら、育成も行なっていきます。
さらに、公園緑地の計画・設計・監理などの業務を通して、樹木の保護・育成・管理、倒木や落枝による被害の抑制を行なったり、
樹木に関する知識の普及・指導といった活動も行なったりと、
「樹木の保護管理の専門家」という面も持ち合わせているといえるでしょう。
樹木医になるためには
樹木医の資格を得るためには、日本緑化センターが実施している「樹木医資格審査」に合格し、樹木医として登録される必要があります。
試験は年に一回実施され、第1次審査、第2次審査と2つに分かれています。
第1次審査では、業績審査と筆記試験が行われます。
業績審査とは、業務経験や事例についての書類審査です。
筆記試験では、択一式と論述式が90分ずつ行われます。
択一式は、一般教養から樹木に関する専門分野などが問われ、
論述式では、樹木医として知識や技術、文章力が審査されます。
第1次審査に合格すると、第2次審査に進むことができます。
第2次審査では、講義や実習を含む2週間程度の研修、面接試験、資格審査が行われます。
研修で行われた研修16科目については、研修翌日に筆記試験が実施され、
また、樹種の識別に関する適性試験も実施されます。
その後、樹木医としての適性を審査するために、面接試験、資格審査が実施され、
これらに合格すると、樹木医として認定・登録を受けることができます。
未経験から樹木医へ
樹木医になるために、特別な資格を持っている必要はありませんが、
先に言うと、未経験から樹木医を目指す道のりは、非常に困難です。
まず、試験の応募資格を満たすハードルが非常に高いです。
資格の応募条件を満たすには、
・樹木に関する業務に従事した経験が7年以上
・樹木医補として認定後、業務経験が1年以上
このどちらかを満たす必要があります。
そのため、未経験や他業種からの転職を考えている方が、樹木医の資格を取ることを目指すは、非常に困難です。
樹木医補は、補資格養成機関として認定を受けた大学等を卒業する必要がありますし、
樹木に関する業務経験を積むのにも、時間がかかります。
年齢がある程度重ねてからの転職となると、業務経験を積むという選択肢も、
認定機関を卒業し樹木医補として経験を積んでからという選択肢も、
非常に高い壁となり得るでしょう。
若い世代であれば、認定機関を卒業して樹木医補として経験を積んでから、
樹木医を目指すことに、比較的チャレンジしやすいと思われます。
しかし、
どちらの選択肢も、費用や時間が非常にかかるため、
どちらが自分に合っているのか、慎重に考えて選択する必要があります。
応募条件を満たしたら、樹木医資格審査を受験することができますが、
この試験も非常に難易度が高くなっています。
日本緑化センターで、応募者の数や合格率などについての公表がされてないので、
具体的な数字を示すことはできませんが、合格率はおよそ20%とされています。
第1次審査の段階で、90~100名まで絞り込みが行われ、そこからさらに、第2次審査で篩がかけられることになります。
そのため、合格率はあまり高くありませんので、
しっかりとした筆記対策と面接対策などが求められます。
他にも、樹木医は体力が非常に重要な仕事です。
屋外での業務がメインとなるので、気候にも影響を受けやすいですし、
樹木の診断や調査に、長期間かかってしまうことも多いです。
また、高所での作業もあるので、怪我等にも注意しなければなりません。
樹木と長期間向き合うためにも、体力が必要でしょう。
また、体力が必要となるということも影響してか、有資格者は男性の方が多いです。
女性の有資格者も年々増えている傾向にはありますが、まだまだ少ないのが現実です。
女性が樹木医として働く際の待遇等については、検討と改善が望まれるでしょう。
このようなことからも、未経験や他業種からの転職となった場合、資格取得をしたいという熱意はもちろんのこと、
費用や時間、試験の難易度、人によっては年齢なども踏まえて考える必要がある、
ということを理解しなければなりません。
樹木医の就職
樹木医になるためには、業務経験が必要なので、
試験に合格してから就職先を決める、のではなく、
業務に携わりながら、資格取得を目指すというのが主になります。
そのため、造園業・植栽管理業・植木生産業・農林業、といったものから、
国・地方公共団体の農林・緑化関係職員、大学や研究者の教職員などの業務に従事しながら、資格取得を目指すことになります。
造園業であれば、街路樹や学校、マンション等の樹木の造園、
林業であれば、樹木の伐採とその加工・販売などを行なっています。
また、役所であれば、国・地方公共団体が管理している樹木の保護・管理・育成といった業務に携わることになります。
この他にも、樹木医を専業で行うといった選択肢もありますが、
あまり現実的ではありません。
確かに、環境問題への関心が高まるにつれ、樹木医への関心も高まっていますが、
樹木医を専業として生計を立てることができるほど、依頼が多いわけではありません。
加えて、樹木医が行う業務に対しての理解を得られていないことに起因して、樹木医の業務への費用も納得してもらえていないという現実があります。
そのため、樹木医を専業として生計が立てることができる人物は、ほんのごく一部となります。
そのため、樹木医を専業で行うという選択には、かなりのリスクが伴うことになるので、
他の造園業等の業務に携わりながら、その合間に樹木医としての依頼がやってくる、
と考えた方が現実的に沿っていると思われます。
樹木医の未経験のまとめ
未経験や他業種から樹木医への転職について、費用や時間等から考えても、
非常に厳しいということを述べてきました。
しかし、樹木医への関心は年々高まっており、
それに伴い今後、樹木医への需要が高まっていくと思われるため、
樹木医自体の将来性はあるということもできます。
また、樹木医は屋外での作業がメインとなるので、有資格者の多くは男性ですが、
最近は、女性の方でも樹木医の資格を取得している方・取得を目指している方が
増加しています。
また、依頼者も女性ならではの仕事を求めている場合もありますので、
女性の方も、積極的に樹木医を目指してみる価値はあると思います。
樹木医を本気で目指したい方は、業務経験を積みながら、
しっかりと試験対策をして、合格を目指してください。