ユリゴコロ
実家の父の書斎の押入れに、ひっそりと仕舞われていた4冊のノート『ユリゴコロ』。それは「私」が『ユリゴコロ』と呼ばれるものを探し求めて殺人を犯していくという生々しい告白文だった。そのノートを読んだ息子の亮介はその秘密に迫っていく。殺人に取り憑かれた一人の女性が深い愛へと辿り着く、恋愛ミステリー。
劇場
売れない劇作家の主人公・永田は、女優を志し上京してきた大学生・沙希と知り合い、恋人となった彼女の家に転がり込む。ままならない日々を送る永田にとって、自分の才能を一心に信じてくれる、沙希の笑顔だけが救いだった――。理想と現実の狭間でもがきながら、かけがえのない誰かを思う、不器用な恋の物語。
怒り
夏の暑い盛りに、八王子で若い夫婦が惨殺され、現場には「怒」の血文字が残されていた。その1年後、東京、千葉、沖縄に素性の知れない3人の男が現れる。指名手配写真にどこか似ている3人。このうちの誰かが犯人なのか。『怒り』は、犯人の心理や逃亡劇に焦点を当てるのではなく、それぞれの男たちと関わり合いになった人間たちの複雑な思い、行動が生々しく描かれている。自分が愛する男、信頼する男は殺人鬼なのか。
面白南極料理人
ウイルスさえも生存が許されない地の果て、南極ドーム基地。そこは、標高3800m、平均気温-57℃、酸素も少なければ太陽も珍しい世界一過酷な場所である。でも、選り抜きの食材と創意工夫の精神、そして何より南極氷より固い仲間同士の絆がたっぷりとあった。第38次越冬隊として8人の個性豊かな仲間と暮した抱腹絶倒の毎日を、詳細に、いい加減に報告する南極日記。
女のいない男たち
6人の男たちは何を失い、何を残されたのか?舞台俳優・家福をさいなみ続ける亡き妻の記憶。彼女はなぜあの男と関係したのかを追う「ドライブ・マイ・カー」。妻に去られた男は会社を辞めバーを始めたが、ある時を境に店を怪しい気配が包み謎に追いかけられる「木野」。封印されていた記憶の数々を解くには今しかない。見慣れたはずのこの世界に潜む秘密を探る6つの物語。
桐島、部活やめるってよ
きっかけは、キャプテンの桐島が突然バレー部をやめたことだった。そこから波紋が広がっていく。地方の県立高校のバレー部、ブラスバンド部、女子ソフトボール部、映画部、野球部――。それぞれの部活で、教室で、グラウンドで、5つの物語がリンクする。彼らがそれぞれ抱える問題は?桐島はなぜ部活をやめたのか?各登場人物の心理が互いに表面的に交わっていく。
わたしを離さないで
1990年代末のイギリスで提供者達の世話をする31歳の介護人であるキャシーは、提供者達の世話をしつつ自分の育ったヘールシャムにある施設で暮らした奇妙な少女時代や卒業後を回想し、自分達の秘密を紐解いていく。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく。
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
9歳の少年オスカーは、ある鍵にぴったり合う錠前を見つけるために、ママには内緒でニューヨークじゅうを探しまわっている。その謎の鍵は、9・11のあの日に死んだパパのものだった……。少年の探し物を見つける旅が笑いを生み、感動し、そして心の奥深くから癒される。時代の悲劇と再生の物語。ヴィジュアル・ライティングの手法で編まれる新しい読書体験も話題になった1冊。
パイの物語
インドのマドラスからカナダのモントリオールへと出航した日本の貨物船ツシマ丸は太平洋上で嵐に巻き込まれ、あえなく沈没した。一艘の救命ボートに乗り助かったのは、インドの動物園経営者の息子パイ・パテル16歳。後足を骨折したシマウマ、オラウータン、ハイエナ、そしてこの世で最も美しく危険な獣――ベンガルトラのリチャード・パーカーだった。1人と4頭の凄絶なサバイバル漂流……。生き残るのは一体誰か!?
ドライヴ
故郷を捨てカリフォルニアへやってきた若者は、映画のスタント・ドライバーとなり、やがてその卓越した運転の腕を裏社会の面々に買われ、逃走車両の運転手稼業に手を染めるようになっていた。そんなある日、彼が参加した強盗計画が仲間割れから無残な失敗に終わる。命からがら逃げのびた彼は車だけをパートナーに、裏切りの黒幕を追って走りだす。斬新な感性でクールに描く衝撃のクライム・ノヴェル。