おやすみプンプン
どこにでもあるような街の、どこにでもいそうな少年「プンプン」の波乱に満ちた半生を描いた作品。小学5年生のプンプンが転校生の田中愛子に一目惚れする。彼女から「もうすぐ地球は人の住めない星になる」という話を聞いたプンプンは決意する。将来の夢は、「宇宙の学者になって人類を宇宙に移住させる」こと。次第にそのような夢は叶わないと思うようになる。しかし、たとえみんなを滅亡から救えなくても、愛子ちゃんだけは救いたい。なぜなら彼女は“運命の人”であるかもしれないから…。落書きのようなヒヨコ”の姿で描かれる主人公や親族とは対象に、高い描写力で描かれた背景がこの作品の特徴でもある。
ひばりの朝
少女の正体は魔性か、凡庸か。「あたしがわるいんです」手島日波里(てしまひばり)は14歳にしては「大人びた」体つきをしており、それがしばしば周囲の誤解を生む。彼女を知れば、男はたいがい性的な感情を抱き、女はたいがい悪意の弾をこめる。彼女に劣情を抱いている男や、片想いをしている少年、劣等感を抱く女、そして彼女をおとしめたい少女が、ひっそりと、かつエゴイスティックに語り出す。ひばりは「周囲の人々が自分の欲望を映し込む鏡」としてそこにいる。
ヒミズ
中学生にして貸しボート屋を営む住田祐一は、不遇な現実を諦観しつつも、平凡な生活を送ることを夢見ていた。ところがある日、かつて蒸発するも戻って来た父親がらみで暴力団から理不尽な暴力を受ける。しかも母親が中年男と駆け落ちして失踪したことを機に孤立無援となった挙句、それに耐え兼ね父親を衝動的に殺害するという取り返しのつかない事態に陥り、天涯孤独の身となる。「世の中で一番悪い奴を成敗する」という生きるための目標と「普通の人生に戻れる」チャンスに揺れつつも、パーフェクトな絶望に向けてひた走りゆく。
ぼくらの
近未来の日本を舞台に、謎の超技術で作られた巨大ロボットを操り、地球を守るために戦う少年少女たちが主人公である。物語は数話ごとに1人の子供に焦点を当てた連作形式で構成される。極限状況に直面する子供たちは、自らの人生、家族や社会とのつながり、生命の意味などを問い直してゆく。地球を守るために戦う少年少女たちだが、かれらを守れる人類がいないことが絶望的な作品。
ホムンクルス
新宿西口の一流ホテルとホームレスが溢れる公園の狭間で車上生活を送るホームレス・名越進は、医学生・伊藤学に出会い、報酬70万円を条件に第六感が芽生えるというトレパネーションという頭蓋骨に穴を開ける手術を受けることになった。その手術以降、名越は右目を瞑って左目で人間を見ると、異様な形に見えるようになった。主人公が、様々な心の闇を抱える人達と交流していくのだが、具現化された心の闇が恐ろしく不気味に描かれている。
マイホームヒーロー
ごく平凡な中年サラリーマン鳥栖哲雄の一家が、莫大な遺産を相続する予定であることを聞きつけた半グレ組織に目を付けられ、犯罪に巻き込まれていくクライム・サスペンス。主人公の哲雄は、生まれて47年間法を犯さず生きてきた男が、20年来のミステリ小説読み&アマチュア作家という武器をフル稼働させ、家族を守るというモチベーションで犯罪組織の追求から逃れるため戦う物語。罪と罰、愛と戦いの物語。
宮本から君へ
大学を卒業して都内の文具メーカー・マルキタの営業マンになった宮本浩は、未熟で、営業スマイルひとつ出来ず、自分が社会で生きていく意味を思い悩んでいる。恋をした女性にアタックするも失恋。痛手を忘れようと、仕事に打ち込もうとするが、ライバル営業マン・益戸に仕事を奪われてしまう。その後、中野靖子と恋に落ち、やっと幸福な時間を手に入れることが出来るが、取引先の部長の息子で大学ラグビーの花形選手・真淵に靖子をレイプされてしまう。怒った宮本は、力の差が歴然としている拓馬に復讐を誓うのだった。極端な幸福と不幸の間を往き来する主人公・宮本の「暑苦しい」物語。
血の轍
母・静子からたっぷりの愛情を注がれ、平穏な日常を送る中学二年生の長部静一。しかし、ある夏の日、その穏やかな家庭は激変する。母・静子によって。毒親を主題に、不安定な母子の関係が描かれたサイコサスペンス。普通の家庭に見えるが、ページをめくるにつれじわじわと不穏なセリフや表情が細部に現れる。母親の捻れた愛情からは逃れられない。
少年のアビス
何もない町、変わるはずもない日々の中で、高校生の黒瀬令児(くろせれいじ)は、“ただ”生きていた。家族、将来の夢、幼馴染。そのどれもが彼をこの町に縛り付けている。このまま“ただ”生きていく、そう思っていた。彼女に出会うまでは――。生きることに希望はあるのか。この先に光はあるのか。混沌とした時代を漠然と生きるわたしたちを映し出す、ワールドエンド・ボーイ・ミーツ・ガール。
新世紀エヴァンゲリオン
大災害「セカンドインパクト」が起きた世界(2015年)を舞台に、巨大な汎用人型決戦兵器「エヴァンゲリオン」のパイロットとなった14歳の少年少女たちと、第3新東京市に襲来する謎の敵「使徒」との戦いを描く。使徒との戦いの中で、少年少女たちは自身の問題と向き合い、葛藤しながらもそれぞれの答えを見つけ出す。