消防法で定められている、ガソリン等の石油類、金属粉等の燃焼性の高い物質を危険物と呼びます。これらの取り扱いや、その立ち合い時に必要となる国家資格が危険物取扱者です。
今回は、危険物取扱者の就職に対するメリットについて詳しく見ていきたいと思います。
危険物取扱者の需要
燃焼性の高い物質は、消防法によって危険物として定められています。これらの危険物を一定量以上取り扱う場合に必要となる国家資格が危険物取扱者です。また、ガソリンスタンドなど、資格非所有者が危険物を取り扱う場合にも資格所有者の立ち会いが必要となります。このように、日常生活内でも必要とされる場面があるため、需要の高い資格です。
危険物取扱者の特徴
危険物取扱者は、取り扱い可能となる危険物の種類によって甲種、乙種、丙種の3つに分類されています。
甲種は、危険物取扱者の中でも最も取り扱える危険物の幅が広く、取得によって規定されている全ての危険物の取り扱い及び立ち会いが可能となります。ただし、甲種にのみ学歴または乙種の合格歴等の受験資格が設けられていますので、受験の際には注意してください。
乙種はさらに第1類〜第6類に分けられ、それぞれ取り扱い及び立ち会いができる危険物が異なります。中でも、危険物取扱者を通してダントツで人気なのが、乙4と呼ばれる乙種 第4類です。乙4の受験者数が総受験者数の3分の2を占めることもあるほどの人気です。
丙種は、乙4からさらに取り扱いできる危険物の種類を絞ったものになります。丙種では、ガソリン、灯油、軽油、重油等の取り扱いのみが可能となり、立ち会い資格はありません。資格の権限が絞られる分、試験の内容は基礎的で問題数も少ないため、難易度は低いです。危険物取扱者の受験が初めてで、物理や化学分野に自信のない方にはおすすめです。
試験は、全て選択式問題で出題されます(甲種・乙種:五肢択一式、丙種:四肢択一式)。どの分類でも3科目ずつに分かれていて、各科目60%以上の得点で合格となります。合格率は、甲種で約30%、乙種は第4類が30〜40%でその他の類で約60%、丙種では50%程度となっています。
免状の種類 | 取扱いのできる危険物 | |
甲種 | 全種類の危険物 | |
乙種 | 第1類 | 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機化酸化物、亜塩素酸塩類、臭素酸塩類、硝酸塩類、よう素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類などの酸化性固体 |
第2類 | 硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム、引火性固体などの可燃性固体 | |
第3類 | カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りんなどの自然発火性物質及び禁水性物質 | |
第4類 | ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物性油類などの引火性液体 | |
第5類 | 有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物、アゾ化合物、ヒドロキシルアミンなどの自己反応性物質 | |
第6類 | 過塩素酸、過酸化水素、硝酸、ハロゲン間化合物などの酸化性液体 | |
丙種 | ガソリン、灯油、軽油、重油など |
甲種 | 乙種 | 丙種 | |
分類 | - | 第1類〜第6類 | - |
受験資格 | あり | なし | なし |
受験科目 | 「危険物に関する法令」:15問
「物理学及び化学」:10問 「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」:20問 |
「危険物に関する法令」:15問
「基礎的な物理学及び基礎的な化学」:10問 「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」:10問 |
「危険物に関する法令」:10問
「燃焼及び消火に関する基礎知識」:5問 「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」:10問 |
試験方法 | 五肢択一式 | 五肢択一式 | 四肢択一式 |
試験時間 | 150分 | 120分 | 75分 |
合格基準 | 試験科目ごとの成績が、それぞれ60%以上 |
危険物取扱者の「乙4」とは
危険物取扱者の中でも一番人気なのが、乙4と呼ばれる乙種 第4類です。その人気の理由は、乙4が扱うことのできる危険物の種類にあります。乙4では、ガソリンをはじめとする引火性液体の取り扱い及び立ち会いが可能になります。乙4に含まれる危険物は、日常生活の中で触れる機会の多い物質も多く、その分需要も高くなるため、人気の資格となっています。
先ほど紹介した合格率では、乙種の他の類に比べて乙4だけ合格率が低くなっていました。この理由としては、受験者数が桁違いに多いことが関係していると考えられます。乙4は、その有用性から、会社や学校の指示によって受験している人も多く、他の類に比べて受験者のレベルが高くありません。そのため、合格率が低くなる傾向にあると思われます。乙4だけ試験のレベルが極端に高いということはありませんので、他の類同様、きちんと勉強すれば合格も難しくありません。
また、乙4はその人気の高さから、他の分類に比べて実施頻度が高い傾向があります。試験日程は都道府県によって異なりますが、東京都ではほぼ毎週開催されています。自分の予定に合わせて日程を組みやすいのもおすすめのポイントです。
危険物取扱者は就職に役立つか
危険物取扱者を取得することによる就職へのメリットはあるのでしょうか。
危険物取扱者は、合格した分類によって扱える危険物も異なりますので、取得した分類にもよりますが、石油系や化学系のメーカーへの就職の際にはアピールポイントとなるでしょう。危険物取扱者を取得していないと就けない職種もあるため、募集の時点で資格を持っていることを条件としている場合もあります。タンクローリーの運転手がその例にあたり、運転手もしくは同乗者が資格を取得している必要があります。
特に、先ほど詳しく紹介した乙4では、石油系の企業で重宝されます。ガソリンスタンドなどでは、アルバイトであっても昇給対象となることがあります。
就職のアピールポイントとして使う際には、丙種より立ち会い資格のある乙種、乙種よりも扱える危険物の幅が広い甲種の評価が高くなります。難易度はその分高くなりますが、より高いレベルに挑戦してみるのもおすすめです。
危険物取扱者の就職に関するまとめ
今回は、危険物取扱者の就職へのメリットについてまとめてきました。
危険物取扱者を取得していると、就職活動の際にアピールポイントになることはもちろん、昇給対象となることも多いです。ぜひレベルアップのために取得してみてはいかがでしょうか。