経理や財務の知識・技術をはかる資格の一つである、所得税法能力検定。全国経理教育協会(全経)が実施しているこちらの検定試験は、経理や会計に関わる実務に役立てられるだけでなく、就職や転職にも活かすことが出来るので、取得したいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の記事では、そんな所得税法能力検定に合格するための勉強法についてご紹介していきたいと思います。

公益社団法人 全国経理教育協会 (編集)
出版社: 清文社 、出典:出版社HP

 

所得税法能力検定とはどのようなものか

それではまず、所得税法能力検定がどういった資格なのかここで簡単に説明していきます。所得税法能力検定とは、源泉徴収、確定申告、その他税務署への提出書類作成など、所得税の基本である個人事業主や新入社員などが身につけたい税務処理ができる知識や、実務での応用的税務処理など、所得税に関する計算などを問う検定試験です。

もう少しざっくり言うと、所得税の基本処理知識や実務での応用的な税務処理能力を問う試験です。この資格を取得することによって、個人事業主や会社員が知りたい源泉徴収、そして確定申告の基本的な考え方や個人事業主が自分で確定申告をする場合の書類作成の仕方などの知識を身に着けることが出来ます。

企業で経理関連の仕事に就いている方は受けると、経理担当者としてのスキルアップに活かせて良いかもしれませんね。

 

また、この資格は取得すると、就職や転職の際に有利に働くことがあります(2級以上は履歴書に記入可能)。実際に、所得税法能力検定を昇給や昇進の条件にしている企業も多く存在します。さらに、税理士試験にも役立てることが出来ます。

税理士試験の問題の中には選択科目があり、この科目の中に、所得税または法人税の科目があります。ですから、所得税法能力検定の勉強をすることで、税理士試験の試験対策も同時にできるというわけです。

このように、所得税法能力検定は取得するとメリットの多い資格の一つなのです。

 

所得税法能力検定の試験概要

次に、所得税法能力検定の試験概要について詳しく紹介していきます。

まず受験資格ですが、こちらは特になく、年齢・性別・学歴等に関係なく誰でも受験できます。資格区分としては、1級・2級・3級の3つあり、試験方法は、どの級も共通して筆記試験です。試験形式は、文章問題/仕分問題/計算問題という3つに分かれています。以下に詳しい試験概要を載せておきましたので、参考までにご覧ください。

試験点数 100点満点
合格基準 70点以上
試験時間 1級:90分/2級:60分/3級:60分
試験会場 協会が指定した全国各地の専門学校
試験日 10月下旬頃、2月上旬頃(年2回)
受験料 1級:3,500円/2級:2,700円/3級:2,300円

所得税法能力検定の難易度・勉強時間

それでは次に、所得税法能力検定の難易度や合格するために必要な勉強時間について説明していきます。どの級も100点満点中70点が合格ラインですが、難易度はもちろん級によって違います。一般的な合格率は3級だと80~90%、2級だと80~90%、1級だと60%となっています。以下に、過去の試験の合格率を表にしてまとめましたのでご覧ください。この表からも、一般的な合格率とあまり差がないことが分かります。

 

実施日時 3級 2級 1級
2020年2月 91.0% 83.3% 60.7%
2019年10月 81.4% 89.4% 71.0%
2019年2月 87.5% 89.2% 61.1%

 

このように1級になると合格率はある程度下がりますが、それでも難易度はそれほど高くないと言えるのではないでしょうか。しかし、だからといって気を抜いてしまい、あまり勉強せずに受験しても合格はできません。

それでは一体どのくらいの勉強時間で合格できるのでしょうか。それは、各級によって大きく違います。まず3級ですが、こちらは合格率も9割を超えており難易度としてはかなり易しい方なので勉強時間は少なくても合格できる可能性は高いです。目安としては、10~15時間程度です。次に2級ですが、こちらも難易度としては易しい方なので25~35時間程度の勉強時間が目安です。1級は、2級・3級と比べて合格率が低く、ある程度の勉強時間や期間は必要になってきます。そうは言っても6割の方が合格されていますし、試験としての難易度はそこまで高くないです。目安としては、50~60時間程度勉強すれば合格できる可能性が高まります。このように、所得税法能力検定合格に必要な勉強時間は、そこまで多くないと言えます。

 

所得税法能力検定試験の勉強法

上記で紹介したように、所得税法能力検定は初心者でも取り組みやすい難易度の試験です。ですので、独学で資格取得することは可能です。ただ、独学で合格するためにはいくつかのポイントを意識しながら勉強に取り組む必要があります。それらをここで紹介していきます。

  • 試験日までの学習スケジュールを立てる

先ほども説明した通り、所得税法能力検定試験に合格するためには、3級で10~15時間程度、2級で25~35時間程度、1級で50~60時間程度の勉強が必要とされています。これを基準にして、試験日からの日数を逆算することで、1日当たりの必要な勉強時間を明らかにすることが出来ると思います。1日に必要な勉強時間を出した後は、その時間の中でどの分野を学習していくのか、具体的なスケジュールを立てることが重要です。

 

  • 過去問をたくさん解く

独学で合格するには、実際の試験形式を把握するために過去問をたくさん解いて慣れる必要があります。また、過去問を解くことによって出題されるポイントや傾向をつかむことが出来ます。こちらの記事でも少し紹介しますが、所得税法能力検定には、公式テキストが存在しています。ですので、そちらを購入し何回も繰り返し解くことで知識を身に着けていくことが合格への近道となるでしょう。また、オンライン上で過去問題集(書籍・PDF)を購入することもできますので、こちらを活用して勉強を進めるのも一つの方法です。

 

まずは、これら2つのポイントを押さえてしっかりと試験の対策をしましょう。

 

おすすめの参考書・通信講座

それでは最後に、試験に合格するためのおすすめの参考書や通信講座について紹介していきたいと思います。

まず、おすすめの参考書ですが、ここで紹介するのは公式テキストの

「演習所得税法」(公益社団法人 全国経理教育協会 編集)

公益社団法人 全国経理教育協会 (編集)
出版社: 清文社 、出典:出版社HP

 

です。

この本は、読む勉強と同時に、問題を解くことによって実力アップができるように各所に演習問題が配置されており、複雑で難しい税法を初心者にでもわかるように解説した、教育用の実践テキストです。また、巻末に総合演習問題も掲載されているので、所得税法能力検定試験対策としても万全の備えができる教材となっています。(2級・3級用)

 

おすすめの参考書について、詳しくはこちらで紹介しているので、是非ご覧ください。

 

まとめ

以上が、所得税法能力検定試験の勉強方法でした。こちらの資格を取得できれば、経理や会計に関わる実務に役立てられるだけでなく、源泉徴収や確定申告の基本的な考え方、自分で確定申告をする場合の書類作成の仕方など様々な知識やスキルを身に着けることができます。是非この機会に、取得に向けて勉強してみてはいかがでしょうか。